2:12 amごはん茶碗
おととい、ずっと使っていた御飯茶碗が割れた。落として割れちゃった。
明日もあさってもそれに、ごはんをよそうはず、だったのに。
乱暴に扱ったことなんて忘れて、急に愛着がにじみ出てきてくる。
もうそれにごはんをよそうことはできないんやで。
今まで、いくつもの陶器を割ってきたけど、自分の台所にあるものには、ちっぽけながら歴史がある。割れて行く瞬間、思わずスローモーションになったりする。巻き戻せたらと思ったりする。
結婚して何年か経った正月の帰省の際に、夫婦茶碗のつもりで買った。
そういうアイテムがあってもいいかな、って気分だったのだ。それまで形式ばったものと無縁だったから、照れくさかったから。なんとなく浮き足だって揚々と買ったときの自分を思い出す。
はじめて自分たちで選んだ夫婦っぽいアイテムだった。
大きい茶碗が緑で小さめが黄色。わたしはその緑色が気にいって、緑の茶碗が使いたかった。だから、亭主のいないときは私が緑を使ったりもした。
先に、緑の茶碗が割れた。でもおそろいの黄色があるから、寂しくなかった。
そしてとうとう黄色の茶碗も割れてしまった。心もぽっかり割れちゃった気がした。
(黄色い茶碗に捧ぐ)