11月のおぼえがき

11月のはじめは、10月とくっついていて、

11月のおわりは、12月とくっついていて。

ひと月30日といういつもより一日少ない月は

感慨なくなんとなくはじまるくせに

急に焦りをともなって12月へと流れ込み加速する

それでも 年中暑い国にいるので ずいぶんのんびりと暮らしていることにかわりはないし

じたばたする必要もないのに

長いこと日本人をやってるので

このときとばかりは、どこにいてもそわそわと落ち着かない気持ちにはなる

11月後半に二日間、シンガポールに行った。これ以上日にちが経つと、もう私の記憶があやふやになってしまうので、書き留めておく。

サンクスギビングホリデーに

シンガポールに。チキチキバンバン(では通じるはずもなくチリィチリィバァンバァン…)を観に。というと、どんな優雅なホリデーなんでせうか…というと全く逆で。

バスでシンガ入り。当地の長距離バスに乗るのも初めてだし、まあ、得難い経験ではあった。

バス会社の情報では(といっても勝手にネットで調べただけの情報)8時間半~9時間、とのことだったので、かかっても10時間くらいかなとたかをくくっていたのだが、どっこい、出入国の手続きもあるし、だいたいトイレ休憩多すぎるし(バスにトイレがついていない)行きは13時間半くらいかかった。日本式にトイレが完備してて、ノンストップで走れば、どれだけ短縮できるか~とは思うけど、ドライバーが根詰めて、仕事するなんて概念がないんだろうなあ。(それでもドライバーはちゃんと2人乗っている)「何時に着くの?」なんて質問するのは私くらいで、ドライバーも”I have no idea~”だそうで。乗ってるのは、ローカルチャイニーズ、ローカルインディアン、マレー人、タイのお坊さん(肩出しのオレンジの袈裟姿寒そう)、白人のおじさん。ザッツマレーシア。ドライバーはマレー人。行きのランチ休憩で停まったホーカーで食べたホッケンミー(ドライ)が思いの外美味だった。息子は、ローカルフードが苦手で、ハンバーガーを注文するのだが、ケチャップじゃなくて、スイートチリソースがドバ~っとかかっていて、辛くて食べられない。しょうがなく、私の美味しいホッケンミーと交換してやり、私は食べたくもない(おいしくない)ハンバーガーを食べた。

マレーシアからシンガに陸路から入るとき、劇的な風景の変化がある?(中進国から先進国への)とか聞いてたので、そこは、私的には一大イベントの重きを置いていたのだけど…夜だったため、真っ暗で、いつ橋(マレーシアとシンガポールは橋でつながっている)を通過したかもわからないうちで、車窓から見える標識がマレーシアの”IKUT KIRI”(左に寄れ)からいつのまにか英語表記”KEEP LEFT”に変わっていたことでシンガポールに入っていたことに気づく。

シンガの入国審査で、並んだレーンが最悪~に遅くて、(おまけに後ろのお姉さんがトイレに行きたいから悪いけど先に行かせてーと懇願するし)バスをかなり待たせて、焦った。バスのドライバーは、乗員をちゃんとチェックしないといけないし、(私たちみたいに、要領を得ない、バスの旅の初心者のガイジンもいるし)ゆる~くやってるけど、結構たいへんな仕事じゃないか?(イミグレを通るし、何かあったときはどうするんだろうか…と心配)実に、バスで国越えっていうのは、バス専用のレーンでもあるんだろうか、なーんて簡単に考えていたのだけど、そんなことはあるはずもなく、「はい、みんなここで降りて~」とドライバーが云うから、わらわらと降りて、イミグレの審査官のところにバラバラで行くのだった。(パスポートの種類も違うから、当然といえば当然なのだけど)たくさんの他のバス旅行者もいるし、自家用車の人もいるし、ものすごい人でごった返していたので、かなり面食らった。日本だったら、まず、この先のどこで待ってますからね!なんてアナウンスがあるだろうと思うけど、そんなものはもちろんないし。ただ、イミグレが済んだら、わらわら歩いてるうちにドライバーが「お、遅い遅い、来た来た!」っちゅうかんじで手招きしている。…とそんな感じなので、同じバスに戻って、他の客の顔を見たときは、少なからずホッとした自分がいた。「ごめんね、待たせてー」「ねばーまーいん」みたいな。

バスの終点はGolden Mile Complexというところで。一日乗ったバスを降り、世話になった(いや、こちらが愛着を感じ始めてただけの)ドライバーともさよなら。いよいよ到着、シンガポール!ヒコーキならわずか一時間なのに、なぜにこうも遠い!…と到着の喜びもひとしおなんだけど、とりあえず帰りのバスチケットだけは真っ先に手に入れて、後はすたこらと、おとなしくタクシー乗り場に並ぶ。シンガポールらしく”Please Q-up”の表示。いいよね、こう書いてあるのは。なかなかタクシー来ないけど、とりあえず、きちんと並んでたらいずれホテルに行けるわね…と心細い旅人はちょっと安堵。タクシーで10分足らずで予約してたこじんまりしたホテルに到着。ともかくベッドがあり、シャワーがあり、NHKなんか映らないけどテレビがあり、ともかくくつろげる。久々だ、こういう感覚。旅って…こういう感じだったよね。ほっと安心、どっと疲れた。

二日目は、ゆっくり起きて、歩いて10分というリトルインディアに行ってみる。私の住んでいる場所にもリトルインディアはあるので、新鮮ということはないが、探し物を求めて。雑貨やの店先に、ビーズをたくさんあしらったフラットシューズを見つけて、きれいだなあと思って値段を聞くと35ドルという。私は買い物大好きで、電光石火の勢いで無駄遣いをする人なんだが、どうもマレーシアに住んでからは、他の通貨が高~~いと感じるようになってしまって(要は貨幣価値がマレーシア並になってしまったの)お店の人に「高くて買えな~い」と訴える。すると「いくらだったら買うの?」というから、「えーと、10ドルくらい~」って云ったら、「やめてよ~ボクの給料カットカットね~~~~(T.T)」と嘆いていた。ごめんね、でも本気だよ、わたしゃ。でも日本人女子のツーリストが二人、そのお店に入っていった。私も日本からのツーリストだったら…買っただろうなあ。35ドルなんて安いと思うだろうよ。

そんなことより相棒の息子はリトルインディアには、全く興味なんてなくて。「はやくいこ~」を連発している。彼はオーチャード通りにある高島屋は「紀伊国屋」に行きたいのだ。そして「寿司」を食べたいのだ。

息子との2人旅なんて、うろうろとショッピングしたり写真撮ったりなんて叶うわけもなく。

地下鉄に乗る。実はシンガの地下鉄に乗るの初めての私たちだ。なんせ、シンガ自体が二度目だ。切符がプラスチックカードで、降車して改札から出たあとも自動的に回収されることもなくて、これ、どうすんのよ~!と思ったら、券売機にもう一度入れたらdeposit1ドルが返ってくる仕組みだった。おもしろーい。(けど、そんなのわかんないよー)オーチャード駅には、券売機近くにツーリストに教えるスタッフのオバチャン(マレー系のシンガポーリアン)がいて、その人は日本語で「ごめんなさいね~めんどうくさくて~」というもんだから、知り合いのような気がしてうれしくなった。

早速紀伊国屋を満喫。息子のみならず、わたしにしても、今回のシンガのメインはミュージカル、次点で紀伊国屋だ。日本の本屋さん、wowwow~♪と唸りたいくらいうれしいものだ。(マレーシアにはKL伊勢丹にも紀伊国屋はあるけど、シンガポールの方が広くてわくわくする)

で、何を買ったかというと、まーたいしたことないんですけどね、

息子はポケモンのマンガ二冊、私は、話題のレコーディングダイエットの本と「暮らしの手帖」などなど。なぜって、日本の定価の1.5倍はするんですもん。躊躇しますよね。

同じビルにある回る寿司でランチ。寿司は永遠だなあ。けど、ここなら私の地元にある寿司屋の方がいいかも。(どっちみち期待はしてないけど)それでも寿司がモウレツに食べたい日本人てやつ。

(とくに息子)

一度ホテルに戻って休んで(子供連れだと、強行軍な旅人になりきれないのが辛いとこ)

夕方、ミュージカルのあるエスプラネイドシアターへ向かう。エスプラネイドからは、ちょうど橋をはさんで、マーライオンが見えて、ここぞシンガポールという眺めが見られるところ。マーライオンから見ると、大きなはりねずみみたいなイガイガのドームがエスプラネイド。

夜8時の公演を観る。02年のロンドン以来二度目。もちろん、楽しく、すばらしい時間だった。

けど、どうも違う。おかしいな。ロンドンでは、本当に車(チキチキバンバン)が私の頭上を通り過ぎていったのだ。ふむ。ここでは、舞台装置として、「飛んで」はいるけど、私の記憶に残ってる飛び方と違う。私の記憶がおかしくなってるのか?あぁわからない。あんまりロンドンの舞台が衝撃的で、錯覚を起こしてしまったのかな。1トンもの車が、観客の頭上を飛び越していくなんていうのは、もちろん道理では無理だとわかっているのだけど、

それでもそうだった記憶があるのだ。ほんとに夢みていたのかな。ロンドンパラディウムで、終演時に天井から降ってきた銀の紙吹雪、あの美しい感動も今回はなかった。(紙吹雪の演出自体なかった)よっぽど最初の記憶というのは、人に強烈に印象を残すものなのかもしれない。

それでも、舞台はすばらしかった。目の前で繰り広げられるダンスは凄いとしかいいようがないし、楽しくてしょうがなかったし、オーケストラはすばらしかった。こういう記憶を友や家族または恋人と脳裏に焼き付けられることは、ほんとうに素敵なことだと思う。この劇場でそんな時間を過ごそうと、めいめいやってくる人々って愛しいなと思った。ねーそう思わない?あなたがそんなこと考えたこともない人だったら、ぜひおすすめする。

終演後のタクシー乗り場はまた、混んでいた。シンガポール、都会だけど、タクシー料金は安い。都会だからタクシー利用者も多いわけで、週末の晩も重なって、めちゃくちゃ待った。たいていローカルは電話で呼びつけるので、タクシー乗り場で待っていても、”ON CALL”(迎車)のライトをつけたタクシーばかりやってきて、イライラするも、ツーリストの身の上待つしかない。舞台の余韻も、列に並ぶ間に疲労感に変わったが、ようやく気のいいドライバーのタクシーに宿まで連れて帰ってもらう。こういうとき愛想のいいドライバーっていうだけで、笑顔になる、上出来な一日の終わりを迎えられる。

翌朝は、早朝にホテルを引き払った。またも10数時間のバスの旅だ。

一日シンガポールを堪能して夜のバスに乗って帰ることも可能だったが、息子を一日連れ回すことを考えるとためらわれた。それに私もシンガで遊ぶよりも、なるべく早くバスの中に人になりたかった。

一昨日の晩、入国したときは真っ暗だったが、朝のシンガからJB(ジョホールバル)への移動、わくわくして見守った。けど、特筆すべきことはなかった。ただ、シンガの端っこの集合住宅を通り過ぎるとき、シンガの人々のなんでもない休日の朝の風景を目に焼き付けた。ここに家があって生活している人と、ただ通り過ぎ、見ているだけの私。こういうなんでもない感傷に浸るのが好きだ。

シンガとマレーシアの一番の違いは、走っている車が違うことだ。シンガを走る車は外車が多くて、ピカピカの新車だ。マレーシアになるといきなりプロトン(マレーシアの国産車)ばかりが走り、ガタピシいいそうな車になる。(もちろんそればかりじゃないけど)

実は、マレーシア入国に際して、私はビクビクしてた。旅の間ずっと気をもんでいたんだけど

入国に際して、私のパスポートのリミットが半年を切っていたことに、今回はじめて気づいたのだった。パスポートなんて10年旅券だし、気にもとめてなかった。まだ来年と思っていたけど、季節感のない国のせいで、実は来年はひたひたと近づいていたのさ。

今回友達から借りた日本のガイドブックに暇に任せて読んでいたら、「マレーシア入国時には6ヶ月が必要」と書いてあって、ドヨドヨ~ンとworryしていたことはいうまでもない。

が、JBのイミグレでは、若い女の審査官で、ハンコを押すのが失敗したとか云っては、わらわらと他の男の審査官たち(複数)が楽しげに彼女の世話を焼き、「新人なんです」と云って笑った。そのおかげで、私のパスポートについてはお咎めを受けずに済んだ。

というわけで、帰りは12時間かけて…我が家へ。

ともかくいろーーーんな意味でひっくるめて  いい休暇だった。目の前の眺めを 自分が動いて変えること それって実に大切なことではないかと 思ったわけで。

※画像はリトルインディアで見た「インディアンバービー」

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