12years ago
手術で生まれたその子は、息がうまくできなくて、とりあげられて一瞬見せてもらったあとすぐに保育器の中に入れられて。しばらくは無菌室にいて、親もガラス越しに面会するのみだった。暢気なもので、退院のときにはじめて知ったのだけど、母子手帳に新生児仮死と書かれていた。生まれたときに看護婦さんがバンバンと背中を叩いてずいぶん慌てていたのはそういうことだったのか、とそのとき知った。幸運なことに軽度な仮死状態だったのだろう、何事もなかったかのように、ほんとうに何事もなく、すくすくと育った。
「手術で生まれた赤ちゃんは、急激な環境の変化に対応できなくて、そういうことは珍しいことじゃないんだよ、そんなびっくりしないでもいいからね」って伝えてくれたのは、あのメンソレータムのナースの絵のように可愛い看護婦さん。あのとき手術の担当だった無愛想だったけどニヤって笑った看護婦さん、手術の台に載せるとき、わたしの足が重いっていじわる言った部長先生、いつも穏やかで優しかった担当医、最初の手術のとき、個室で、人生最大の恥ずかしい記憶の介助をしてくださった、気さくな看護婦さん‥みんな、どうしているだろうか。
ひとは一人では生まれてくることもできなくて
自分は覚えてもいないけど、知らない人に手助けしてもらって
手や、声や、笑顔や 目線や いろんなものをもらって
・・・
いろんなことがあった。(っていうほどのことはないか‥。いや、平凡で幸せな‥と歩いてきた人生だが、おもえばいうほど平凡でもなくなっていたり。)
いつもいつもいっしょにいた。
どんな記憶をさかのぼっても わたしのよこに。今までは。
わたしが必死に守っていたようで
実際 わたしが支えられてた。
無菌のガラスの箱の中にチューブで繋がれて、うつぶせでねていた小さくて柔和な人に
ありがとよ。
そんな彼も 今晩は 友達がお泊まり。
大きくなれ もっと大きくなれ たくましく はばたいていけ
ひとりでも どんどん飛べるように
どこでも友達みつけて
未来は いまよりもっとすばらしいものだと信じてるよ
↓いつも私の心の中にある歌”Ooh Child”The Five Stairsteps
youtubeちょっとメッセージ性のある動画